2000.12.12
JGU
特集 誰もが一緒に楽しめるインクルーシブスポーツの可能性
東京ゲートボール連合「聴覚障がい者も一緒に楽しめる環境づくり」
東京ゲートボール連合(TGU)では、年齢・性別・障がいの有無にかかわらず、誰もが一緒に楽しめるインクルーシブスポーツとしてのゲートボール普及に取り組んでいます。
その一環として、聴覚障がい者と健常者が共にプレーできる環境整備を進めており、2022年の「手話通訳者のためのゲートボール体験会」を皮切りに、さまざまな普及活動を展開してきました。
現在、東京ゲートボール連合には約50名の聴覚障がい者の会員が所属し、TGU主催大会にも積極的に参加。健常者と同じフィールドで競技を楽しんでいます。
2025年、東京2025デフリンピックが開催された節目の年に、TGUが進めたインクルーシブスポーツの取り組みをご紹介します。
■ 北海道・芽室西中学校で「障がい者への普及活動」をテーマに講演
TGUは2022年、ゲートボール発祥の地・北海道芽室町と包括的連携協定を締結し、普及活動などを連携して実施しています。
その取り組みの一つとして、6月26日(木)、TGU役員2名が芽室町立芽室西中学校を訪問し、全校生徒を対象に「障がい者への普及活動」をテーマに講演しました。
講演では、ゲートボールが性別・年齢・国籍にとらわれず、同じルール・同じ道具・同じ環境で楽しめるインクルーシブスポーツであることを紹介。芽室町内で活動するゲートボール少年団の存在や大会参加を促すメッセージも伝えました。
生徒からは
「聴覚に障がいがある方とも一緒に楽しめることを初めて知った。障がいへの理解や支え合う大切さを学べた」
といった声が寄せられました。
■ 聴覚障がい者へのゲートボール審判講習会
学科講習
実技講習
TGU主催により、聴覚障がい者約30名に加え、手話通訳者の協力を得て開催しました。
最初に7月6日(日)に学科講習会を実施。
今年度の審判実施要領の一部改正点を含め、基礎から丁寧に学習しました。
聴覚障がい者は耳から情報が得られないため、専門用語やカタカナ語の理解に時間がかかることがあります。そのため、講義では「外縁」「インナーフィールド」「アウターフィールド」などの用語を、必要に応じて「内側」「外側」といった言葉に置き換え、視覚的に理解しやすい説明を加えながら進行しました。
健常者向けよりもスピードを落とし、受講者一人ひとりに寄り添った講習となりました。
続く7月8日(火)の実技講習では、3コートに分かれて競技を行いながら審判を実践。
TGU審判部・試験委員が身振りや見本を交え、手話通訳者と連携して動作のポイントを丁寧に指導しました。
受講者からは「疑問だった部分が初めて理解できた」「納得できて自信につながった」といった声が聞かれました。
講習会の1週間後に実施されたTGU主催大会では、受講者が相互審判に挑戦し、学びの成果を発揮する姿も見られました。
■ 東京都聴覚障がい者ゲートボール交流会
10月4日(土)、杉並区聴覚障害者連盟主催の「東京都聴覚障がい者ゲートボール交流会」が杉並区で開催され、TGUが後援しました。
今大会は、年齢・経験・会員条件などの制限を設けないオープン交流会として実施。
聴覚障がい者のプレーヤー、ゲートボール初心者、ろう者チームで一緒に活動している健常者メンバー、地元の杉並区ゲートボール連盟の参加者など、多様な仲間が一堂に会しました。
8チームが参加し、当日抽選によるグループ分けでリンク戦を実施。
開会式では手話による挨拶が行われ、会場はあたたかい空気に包まれました。
障がいの有無や年齢、性別を問わず同じ場で楽しめるゲートボールの魅力を、改めて体感できる一日となりました。
■ 聴覚障がい者へのゲートボール技術講習会
昨年に続き、TGU主催による「聴覚障がい者へのゲートボール技術講習会」を、11月8日(土)に練馬区で開催しました。当日は、都内の聴覚障がい者約20名が参加しました。
今年の講習会では、昨年好評を博した「技能コンテスト」を中心に実施。2コートを使用し、ゲート通過、タッチ、距離感など、競技に必要な技術を学べる14か所の技能コースを設置しました。
講習の冒頭では、TGU普及指導部長が14か所の技能コースを順に回りながら、一つひとつのポイントを丁寧に実演。ゲートボール経験のある手話通訳者による分かりやすい説明もあり、いよいよ開始。
3人1組で「競技者」「得点採点者」「ボールの設置・回収」の役割を交代しながら、熱心に各コースに挑戦する姿が印象的でした。
午後は、午前中の技能コンテストで意識した技術を実践に生かすため、役員と選手が一緒になって紅白戦を実施。随所でアドバイスを受けながら、参加者は普段以上に集中した様子で試合に臨んでいました。
閉会式では、技能コンテストの得点結果を記した修了証が一人ひとりに手渡され、「次も頑張ってください」との激励の言葉が贈られました。
毎年実施している本講習会は、楽しみながら総合的な技術向上を図ることのできる貴重な機会です。技能コンテストを通じて技術的理解を深めるとともに、チームワークや協働の大切さを改めて学ぶ場となりました。
■ 今後の取り組み
2026年度は、3つの国と地域から聴覚障がい者のプレーヤーが集まり4月に練馬区で開催予定の「2026年デフ日韓台オープンゲートボール交流大会」への後援も予定。
障がいの有無や国籍の壁を越えた国際交流を通じ、インクルーシブスポーツとしてのゲートボールの未来をさらに広げていきます。
写真・記事協力:東京ゲートボール連合












