2020.03.16
JGU
【再生プロジェクト】島根県のシンデレラ・ファミリー教室を見学して
島根県ゲートボール協会では、都道府県ゲートボール団体の2019年度再生助成事業として、新規愛好者拡大を目的に、各地区でシンデレラ・ファミリーゲートボール教室を開催しています。
以下は、出雲地区で行われた第3回目のシンデレラ・ファミリーゲートボール教室を見学した日本ゲートボール連合(JGU)常務理事・中村健治によるレポートです。
『すぱーく出雲』を訪れて
「カーン カーン」と乾いた打球音が室内に響き渡る。
「いいねえ!」「上手い!」「ナイスショット」と周囲から歓声が沸き起こる。
第1ゲートを見事に通過させた“出雲のシンデレラガール”は、戸惑いながらも、やや得意気に、今度は第2ゲートへの打撃を繰り出す。
2020年3月7日(土)、全国に拡散するコロナ騒動でイベント自粛ムードの最中、屋内ゲートボール場『すぱーく出雲』での光景である。
会場の屋内ゲートボール場『すぱーく出雲』
参加者の皆さん
女性指導者との意見交換の中から誕生したシンデレラ・ファミリーゲートボール教室
『すぱーく出雲』を訪れたのは、初心者を対象にした『シンデレラ・ファミリーゲートボール教室』を見学すること、そしてこのような普及活動が全国に広がる可能性を見極めるためである。
ことの発端は、昨年12月に島根県ゲートボール協会が主催した指導者研修会に遡る。同研修会では、県協会の会員数が20年以上にわたり減少の一途を辿る中、様々なディスカッションが行われた。その中でも、ひときわ活気に満ちた女性グループがあったので、飛び入り参加させてもらった。テーブルを囲んだ現役愛好者の皆さんにご自身がゲートボールをはじめられたきっかけをお伺いしたところ、「子育てや家事の合間に、仲間たちとお汁粉を食べながらプレーを楽しみました」との良い話を聞かせてもらった。
それなら、これを機に「島根県で、女性たちを対象にお茶をしながら楽しめるゲートボールを復活させましょう」ということで、シンデレラ・ファミリーゲートボール教室が誕生したのである。
開会のあいさつをする島根県ゲートボール協会の本田恭一理事長
松江から掛けつけた呼びかけ人の山本千恵さん
原点回帰がゲートボール再生のカギ!?
JGUが、ふだん、業務上、関わりを持つのは、47都道府県に所在する加盟団体であり、傘下には市町村の競技志向のプレーヤーが会員となって存在する。
全国大会の開催などが事業計画のメインを占めているため、開催地との協議、審判員の養成・講習会の開催、ルールの改正などに多くの時間を費やす反面、プレー経験のない方々に、ゲートボールの面白さ(たとえばボールをゲートに通したときの爽快感など)を味わってもらうことを疎かにしてこなかっただろうか?
屋内コートに響くシンデレラたちの笑い声を聞きながら、そんな思いが頭をよぎった。ゲートボールとはそもそも、誰もがすぐにプレーに参加できる気楽さと、会話を弾ませながら打順を待つ気軽さをアピールポイントにできる生涯スポーツではなかったのか?
原点回帰の中にゲートボール再生への道があるのかもしれないと感じた。
笑い声とともに賑やかにプレーする“シンデレラ”の皆さん
子どもたちもマスク姿で参戦
シンデレラ・ファミリーゲートボール教室から感じたこと
ゲートボールのルールひとつとってみても、いまある「競う」ゲーム用公式ルールとは別に「楽しむ」ゲーム用ルールがあってもいいのだ。
たとえば、第1ゲートを外しても、次の打順では全員が第2ゲートに進めることにすれば、スタートで取り残される疎外感は薄れる。
また、自球をコート外に出されてアウトボールになっても、次の打順でインボールとして打撃可能とすれば、ゲームへの参加意欲も減退しないだろう。
審判員のプレーヤーに対する接し方にしても、初心者に対しては「ゲームをさばく」のではなく、「盛り上げ役に徹する」ことも大切な要素だと思う。
野球にもエラーに寛容な草野球があり、卓球にもラリーの応酬を続ける楽しみ方があるように、ゲートボールにも娯楽性を重視した、初心者ルールを導入すべき時期が来たように思う。
そうした地道な取り組みの中にこそ、地域のゲートボールを再生できる、かすかな灯を見たように思う。
会員数の減少をいたずらに嘆く前に、着手すべきことはたくさんありそうだ。
島根県ゲートボール協会の本田恭一理事長曰く、「笑い声は人を引き寄せ、怒号叱責は人を遠ざける」という、この言葉を重く受け止めたい。
この日本発祥である生涯スポーツの考案者である鈴木栄治氏も遠い空から賛意を示してくれているに違いない。
【文:JGU常務理事 中村健治】